キッチンと、ばななと、つぐみ。

人生とは何か?
私とはだれか?

年甲斐もなく、いまだにこんな青臭いことを考えてしまう。

昨日、吉本ばななの『キッチン』を読んだ。
有名で、賞もとっていて、たくさんの人がおすすめしている本。

それなのに、
だからこそ。
「かつての」ベストセラーだとあなどって、
発行された1988年とは今は違うから。
そう思って、今まで読まなかった。


私が、吉本ばななを読まなかった決定的な理由。
中学か高校の頃、国語の問題集にでてきた『TUGUMI』。
その頃の私は、受験勉強の癒しを国語の問題集に求めていた。
なにかの小説や随筆、論文を一冊全部読む時間はなくても、
その切り取られた一節を読むだけで、その世界に没頭し、
現実逃避ができた。
ところが、これはどうにもつまらなく、
つぐみがちっとも魅力的にうつらず、
吉本ばななは、自分と相性が悪いんだな、そう思ってここまできた。


そんな私がこの本を手に取ったのはほんの偶然。
帰りの電車で読むのにちょうどいい厚さの文庫本だったから。
それだけの理由。

なのに、
バレンタインのチョコを作って、眠くなりながらラッピングして、
寝たいのに、続きが気になって読んで、結局、午前様。
それでも飽き足らず、読んだ興奮が醒めぬ前にこうして読書録を書いている。


でも、重くなった瞼とは裏腹に、心は軽くなった。



私の青くさい悩みは、ゆるやかな熱で溶かされて、
解決してはいないけれど、
いますぐ答えを求めなくてもよくなった。

登場人物たちが、少しずつ癒され、
自分の位置を確認していく作業のように、
わたしもそうすることを赦された気分だ。

救いのあるラストにほっとしたのは、
てっきり登場人物たちに肩入れして、
ゆりこさんや祖母目線で、みかげや雄一の行く末を案じていたからだと
思っていたけれど、

本当は、
ゆりこや雄一にいつの間にか自分を重ねていたみたいだ。

もっと前に読んでいたらよかったかも。
主人公と同じくらいの年に。


いや、そのときに読んでいたら、きっと嫉妬していたかも。

二人で一つのような、みかげと雄一に。
失ってしまったとはいえ、絶対的な保護者がいたことに。
人とはずれても「自分」をもっていることに。

そっちに気を取られていたら、
このカタルシスは得られなかったかも。


でも、やっぱり、この文章の雰囲気を知らなかったのは損かな。

いつか、息子が思春期を迎え、
青臭い悩みを抱える時期が来たとき、
優しさや孤独、喪失と再生の意味を知り始めてもいい頃、
いつでもこの本を読めるように、本棚においておこう。


聞き耳を立てるあわせて読みたい聞き耳を立てる
  矢印コウモリのジレンマ
  矢印浅田真央の鐘の怒りはどこへ
  矢印ネガティブなこと書きます。


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